大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
「それじゃ…今までの私は違う方に思いを寄せていましたの!」
「そうらしいね…だからと言って、菜生にした事は許せないよ。それに、もう兄貴は結婚してるし、今度兄貴を追いかけるってなったら、あんたの親の会社、抹殺するよ」
低く鋭い奏の声に、結衣は肩をビクッと震わせた。
「今までの会話、録音してあるから今までの証拠と一緒に警察に出す?」
健さんの用意周到さに、智奈美といつの間にとア然として彼を見つめていた。
「そうだな…あれだけ暴露してくれたから証拠になるだろう。しばらく刑務所に行ってもらおうか!」
あんなに自信満々でいた結衣さんも、今は怯えた子羊のように小さく震えている姿に、可愛そうにもなってくる。
「奏、やめて」
咄嗟に叫んでいた。
「被害者はお前なんだぞ、庇うのかよ」
「庇ってないよ。結衣さんにされた事は許せない。だからと言って警察沙汰にしたい訳じゃない。
結衣さん…あなたのした事は犯罪です。だけど、もう私達に関わらないと約束してくれるなら、今までの事は水に流します。でも、約束を破ったら容赦なくあなただけじゃなく、ご家族にも責任を取ってもらいますよ」
涙を流し、ごめんなさいと何度も言いながらコクコクと頷いた結衣さんは、本来悪い人ではないのかもしれない。