大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

「うるさい…バカ女」

「毎回バカって言うな…」

酔ってるから気にならないけど、周りから見たら痴話喧嘩だ…

「いいから来い」

奏は、石黒さんから私を引き離そうとするが、石黒さんの手が私の腕を掴んでいた。

「先輩、人の獲物取らないでくださいよ」

獲物だ…と。

石黒さんに振り返って怪訝な目で見た。

「俺の女って言わないとわからないのか!」

「失恋したんじゃ…いや、それならいいす。先輩の手垢ついた女に興味ないんで…あーぁ、栗原さんにすればよかったよ」

一人で納得してのサイテー発言、ありがとうございます。

思わず、ハイヒールのかかとの蹴りが石黒さんの脛に当たり痛がっている。

『「ざまあみろ」』

奏と2人でハモり笑いあった。

「菜生、帰るぞ」

「うん」

なんだか嬉しくて、手を差し出し直した奏と手を繋いで帰った。

「お前、本当に男の見る目がないよな」

「そうだよね…奏でしょ、奏でしょ、で、石黒さん?」

「未然に防げたけどな」

「えっ、サイテー発言さえなかったら別によかったんだけどな」

「お前を慰めていいのは、俺だけでいいんだよ」

なんだか嬉しくて、いつもの憎まれ口が出てこない。

なかなか私の返事がない事に照れ出した奏。

「てか、いい加減連絡先教えろ」
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