恋の始まりの物語
「お前、怖いんだろ」
「はあ?」
「俺がお前を見捨てると思ってるだろ」
「──!」

見透かしたように、湯川が言う。

「長い付き合いだ、舐めんな」

ニヤリと笑って、私の頬を愛おしそうに撫でる。

「勇気を出せ。美玲お前、『男前』なんだろ。
何も考えずに、俺のとこに飛び込んでこい。

お前一人支えられないほど、器は小さくないつもりだ。

それに、この世に俺以上にお前を愛してる男はいないし、俺以上にお前を幸せにできる男もいない。
諦めろ」

「ぶっ、何だよそれ。どこから来るのその自信」

思わず吹き出してしまった。

そんな強気なことを言ってるわりには、必死な眸をしてるよ。
眸の奥に、断られる不安と闘っているような揺らぎが見えるよ。

はぁ、と肩から力を抜く。
──そうだよね、誰だって怖い。
他人を信じるのは。

ましてや恋愛なんて、真面目にすれば、剥き出しの心で相手に対するものだ。
傷付く場面は多いし、傷も深い。

それでも、湯川は友達の居心地良さを捨てても、傷つく可能性が高くても、私を望んでくれてる。


───振り絞るとき、かも。

信じる、勇気を。
湯川の勇気に、負けないように。

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