Ignition
「栞那」

桐谷に真正面から応えようと心を放つ。新井は息のかかる距離まで顔を近付けて、そのまま唇を合わせた。

無駄のひとつもない腰に触れ、カットソーの下に手を差し入れる。滑らかすぎる肌は逆に、触れた側をぞくりとさせる。

「悪いが加減はできそうにない」
「最高です、そういうの大好き」

 爪の割れた片手を守りながら、欲望の赴くままに桐谷の身体をソファの上に押し付ける。

頬から首、首から胸元へと白い肌が艶かしく赤味を帯び、服越しに繋がった下肢の熱はどちらのものかわからなかった。片手でカーディガンをはだけさせる。

汗で張り付いたカットソーを捲り上げると桐谷の表情に恥じらいが浮かぶ。

まずはルームパンツから、と手を掛ける。腰骨の先まで引き下げても下着はおろか、秘部を覆っているはずのものが、そこにある気配すらない。

触れずにはいられないほど美しい裸体を前に、通り過ぎてしまったはずの熱が完全に戻ってきた。しかし、ふと桐谷の顔を見た途端に手が止まった。桐谷は声も出さずに、涙をこぼし続けている。
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