Ignition
アイスコーヒーが運ばれてくる。ふと見れば、坂巻は不思議そうな顔で新井の様子を窺っている。新井は上司らしい顔を取り繕った。

「そういえばお前、かなり出しただろ洋服代。みんな初めに出したやつの金額を目安にしようとするからな。じゃなきゃ総務部全員って言ったって、あの額が集まらないことくらい俺でもわかるぞ」

「……すみません、僕もまさかあんなことになるとは思ってなくて。反省してます」
 坂巻は苦笑いした。

「坂巻には責任を取ってもらう」
「え」

 テーブルの上で指を組み、新井が深刻な表情でそう告げると、坂巻の顔が凍りついた。

「あの二十万の使い道を考えてくれ。俺も直接金を貰うわけにはいかない。部内の飲み代にでも回そうかと思ったが、それだと払った金額が平等じゃない分、不満も出ると思うんだ。何か、全員の納得いく有益な利用方法を提案して欲しい」
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