Ignition
「今、若いやつらが買い物ばかり行く理由が良くわかった」

 長年意識してこなかった分、デザインの違いに気付けるかどうか定かではないが、桐谷の喜ぶ顔が見られると思えば、勉強する価値があるというものだ。ついでに部内の連中を驚かせてやればいい。

「仕上がりは三週後でしたよね、週末空けておきます」
 坂巻はジャケットからスマートフォンを取り出して、早速予定を登録している。

「桐谷とはまだ、付き合って一日も経ってないが……、俺も自分があんなに歯止めの利かない人間だとは思っていなかったなあ。でもそれも、相手が桐谷だからなのかな」
 半ば独り言のように新井が呟く。

「……まあ、なんだ。時間が過ぎるままに任せていた部分をあらためて見直すと、発見もあるってことなんだな。これからは色々と想定外が続きそうだが、そういうのも嫌いじゃない。楽しくなりそうだよ」
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