私の好きな人



「やば、今日も一段と多いな…」

「ほんとだぁ…月曜日だもんね」

「だな」


駅に着くなり、溢れる人混みに息を漏らす



「貸して」

「へ?!」


私のカバンをスっと奪い取った良平

目が合った瞬間、良平は薄ら笑顔を見せた



………トクッ


「…ありがと」


なんとも小声な……

私の精一杯のお礼は、ちゃんと聞こえただろうか


良平はズルい

久々に見た笑顔


………素敵です。



「おい」

「…あ、ごめんっ」

「いや…」


1人ニヤけながら歩く私のスピードが不自然に遅い

それを気にしてか、良平は私に近づく



「……手でも繋ぐ?」

「……え」

「…冗談、ほら行くぞ」

「……うん」



繋ぎたい

良平と手………繋ぎたい


あの日の事を思い出した

水族館デート…


もう私の思考回路は沸騰間際


結局繋がれない手を、一生懸命に追いかけながら良平の後ろを付いて行く



なんだろ…

今日まだ始まったばかりなのにドキドキが止まらない


良平がいつもと違う…?

キュンキュンさせられっぱなしだ




「まじか…」

「ん?良平どうしたの」


駅のホームで
突然、歩くのを止めた良平は


「…やっぱりな」

なんて意味深な言葉を吐いたあと


私へと視線を移し


「行こ」

「…っ!」


良平は優しく笑うと、私の手を握り歩き出した

繋がれた手を、私はじっと見つめる



やった…ぁ

手…繋いでる



……………でも、なぜ急に??

ふと冷静になる


良平、何か言ってたよね?




「きたきた!彩月ー!!」



突如として聞こえた私を呼ぶ声

賑わう駅のホームで一段と大きな声に私は辺りをキョロキョロ…


そして繋がれた手はグッと強くなる

良平…


「彩月…あそこ」


良平が指差す方を探すと…


「小林くん…?!」



手をブンブン振り上げ、こっちを見ているのは、間違いなく小林くんだ


良平はいち早く小林くんの姿を発見したらしく

握られた手も、それが理由

さすがに気付いたよ、私だって





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