私の好きな人


「おはよ、彩月」

「おはようございます…」


上手く笑えてない…

小林くんの顔をチラッと見ただけの挨拶になってしまった


それでもどこか楽しそうな小林くんは
良平に近づき


「これはこれは奇遇だね、藤くんも彩月と登校とは」


なんてバレバレな嘘をつく

"藤くんも"ってなんだ…

私は小林くんと登校してるつもりは無いけども


「…奇遇じゃないだろ」

「ありゃ…バレちゃったかぁ。それは残念。でも予感的中で、来て正解」

「……」

「しかし家が近いって良いよね?偶然にも一緒に登校できるじゃん?さすが幼なじみ」

「送迎付きの御曹司がなんでわざわざ電車なんだよ」

「んー…?」


小林くんは私に視線を移し、ニカッと笑う



すると

♪~♪~♪~♪~
【まもなく2番線に電車がまいります】


小林くんが何か言おうとした時、私たちが乗る電車の到着するアナウンスが鳴り始めた



「おっと、電車きた?」


そう言った小林くんは、ふと私と良平が手を繋いでいる事に気づき


その小林くんが気付いたことに気付いた良平は私の手を握る力を強め、少しばかり私の体は良平の後ろへと隠される


一瞬…

小林くんの表情が険しくなった気がした


繋いでる手のことを茶化すのかと思いきや
すぐ目を逸らし、自分の手をポケットに入れ到着した電車へと視線を変えた


「行こ」

「あ、うん」

良平は優しい声でそう言うと、私を人混みからかばうように誘導する


なんとか乗れたが、お決まりの満員電車

それはそれは窮屈です。



って、そんなことはどうでもいいッ…!

今の私の状況よ…


乗り口付近に立ったままの私の前には良平が


そして私を挟むかのように立つ小林くんが後ろへ



良平と小林くんはそれぞれ片手で吊革を握っている

右手は良平の手と繋がっていて

「っ…?!」

そして今

左手が誰かと繋がった


ふと視線を上げると

犯人はそっぽを向いたままの小林くんだ



2人とも背が高い

156cmの私の顔2つ分は上



これ………なにィィ???



なんか



捕らわれた宇宙人とやらに見えてはないだろうか……


そんなこと思ってる余裕など



あるわけがない



私…………


なんでこんなことになっちゃってるの…




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