愛があれば、それで

気づいてしまったこと

「……ただいまー。風音ー。いい子にしてたかな」



残業を終え、帰ってきた透くん。
ベビーベッドに向かい、寝ているわが子に自分の頬を擦り寄せている。



「おかえり。ご飯、食べるでしょ?」


「うん。先にお風呂入ってくる」


「沸いてるよ」



ありがとうとあたしの頭をポンッと撫でて、お風呂へと歩いていく。



「今日もだ……」



退院して、お家に帰ってきた次の日から毎日。
残業と彼が帰ってくるときには必ず、スーツから香る香水の匂い。

ある特定の匂いだった。



「またなのかなぁ……」



あたしが妊娠してから、透くんと体を重ねられないせいで透くんが我慢していることも。
だから、安定期に入ったときにしてもいいと告げたのに。
それをしなかったのは既に相手がいたからだろうか。
でも、もしもそのときに相手がいたとしたら、今回の相手とは違う。

だって、今回の相手は……。



「バカ……」



確信が持てないいま、ただ耐えるしかなかった。

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