愛があれば、それで
「じゃあ、行ってくるよ。なんかあったら電話しろよ」


「うん、行ってらっしゃい」



あたしにチュッと軽くキスをして、家を出ていく。
あたしが仕事を休職してから、毎朝の日課だ。



「ふぅ、早く会いたいな」



臨月で、初期の頃からは想像もつかないようなお腹を撫でては、幸せに満ち溢れる。

平凡な家庭かもしれない。
別に、お金持ちでもない。
あたしも透くんも容姿がすごく優れているわけでもない。
まぁ、透くんはカッコイイ部類に入るのかもしれないけど、それでも芸能人のようなかっこよさはない。

でも、それでいいのだ。
それがあたしにとっての幸せなのだ。

大好きな旦那様と、お腹の子供。
そして、あたし。

3人で、この家で。
これがあたしの居場所だ。
だれにも入り込むことのできない、かけがえのない場所だ。

付き合っている2年間。
透くんは、社内ではすごく持てる部類で。

そして、透くんは、誘われると断れない。
バカみたいな人間で。
だから、たくさん泣いた。

でも、それでも別れなかったのは、好きだったから。

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