愛があれば、それで

家族と一緒に

「いててて、腰が痛い……」


「お腹じゃなくて腰?」


「うん、腰」


あたしの言葉にテニスボールを後ろから当ててくれる透くん。



「風音ー、お姉ちゃんになるんだよー?」



少し歩けるようになって、言葉も少しずつでてきた風音にそう言うと、「おねえー?」と返してくる。

あれから、1年半の月日がたち、あたしたちの仲は前に戻っている。

もちろん、あのことを忘れた日なんかない。
でも、あれから本当に透くんは全ての誘いを断っている。

「奥さんに悪いからそーいうのやめてくれますか」って。

会社じゃ、もっぱら愛妻家と話題だ。

そうこうしてるうちに宿った、新しい命。
風音の時とは違う。
苦しくても、大変でも。
透くんがそばにいてくれる。

この新しい命と4人で。
新たにまた家族として。
大切な家族として生きていく。

あたしたちは、この形で家族になることを選んだ。
それは、かけがえのない宝物だから。

もう、ずっと。
信じていくよ。

噂では、菜美は産休代理が終わったあと、海外に行ったと聞いた。
もう会うことはないけど、元気でいてほしいとは思う。

そして、透くんは、元々いきたがっていたシステム部への異動が決まり、バリバリと働いてくれてる。

あたしはといえば、この通りまた産休だ。

これからもまたなにかにつまづくことはあるだろう。
それでも、前を向いていきていきたい。

家族と一緒に。


-Fin-
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