王太子殿下の花嫁なんてお断りです!
今、領主は西の国にいて何か良からぬ話を進めている。

ならばこの領地はどうなる?

この地は誰が統括する?

森が焼け、領主の屋敷が焼け、今度は誰の民家がいつ燃えるかも分からない。

そんな状況の中なら、どんなに気前のいい人達ばかりとは言え、統括する人がいなかったらきっと混乱が起きる。

今この土地を統括できるのは、領主の代わりを務められるのは自分だけだ。

けれど本来統括するべき領主を守るのなら西の国に行かねばならない。

ぎっと遣いを睨みつけながらオリヴィアは必死に考えていた。


「早く答えを出して下さい。弟王は気の長い方ではいらっしゃいませんので」

「あなた方がこんな難問を出すからです」

「その通りですね。シュカ」


遣いに名前を呼ばれて姿を現したのは、薄茶色のマントのフードを深く被った人物だった。


「連れて行く」

「なっ! 私は了承していません!」


近づいてくるシュカと呼ばれた人物に身構えるオリヴィアだが、すぐ近くにまで近づいてフードを取ったシュカに驚いて目を丸くした。


「メ、イ?」


そこにいたのはいつもとは違う、厳しい表情をしたメイだった。


「……申し訳ありません、お嬢様」


シュカと呼ばれたメイは冷酷にそう言うとオリヴィアの首の後ろに手を振り下ろして気絶させた。


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