王太子殿下の花嫁なんてお断りです!
「いや、適任だ。お前ならできるだろう」

「しかし!」

「何も、お前一人に大きな対応を背負わせるつもりはない。客人は主に姉上と俺がもてなしをする。お前に頼むのは、姉上の補助だ」

「ディアナ殿下の補助ですか?」

「ああ、そうだ」とアーノルドは大きく頷いた。

「俺は王太子の立場にある。いかに重要な客人とは言え、そのもてなしまではとても手が回らない。その点、社交界の白百合と名高いお前ならできることも多いだろう」

「そんな、白百合と申されましても、私は夜会に出席したことなど殆どありません。ディアナ殿下のご迷惑にしかならないと思いますが」


全く冗談ではない。冷や汗をかきながらオリヴィアがそう答えても、アーノルドは「そんなことなど姉上も俺も承知済みだ」とぴしゃりとはねのけられた。

オリヴィアは視線を下げて俯いた。

こんなにも気乗りのしない相談など他にあるだろうか。

自分には客人を持てなすメリットはおろか、そんな気概もなく、技術も経験もない。できるはずがない。

愕然とするオリヴィアに気づいたアーノルドは、「そんなに暗い顔をするな」と何とか励まそうとする。

そして思いついたのか、こんなことを言い出した。


「お前が上手く客人をもてなしたなら、そうだな、お前に褒美をやろう。ひとつだけお前の望みを叶えてやる」

「え?」


気落ちして俯いていたオリヴィアはぱっと顔を上げる。

アーノルドが言った言葉が信じられない。


「何でも、ですか? 本当に?」

「ああ、何でも。領地に戻るでも、婚約解消でも、領地への金銭的な援助でも、何でもお前が望むことをひとつ叶えてやる。どうだ、お前にとってもよい取り引きではないか?」


確かにこれ以上にない絶好の機会だ。

上手くいけば、この城から抜け出すことができ、美しい領地で温かい領民達と再び暮らすことができる。

しかも婚約解消ができるだなんて、こんなにも素敵なことが他にあるだろうか。


「……ます」

「え?」

「やらせて、頂きます!」


絶対に、やってやる。

そして絶対に願いを叶えてやる。

燃え上がるようなそんな気持ちがオリヴィアの中で滾っている。

瞳に強い意志を灯すオリヴィアを見て、アーノルドはくすりと笑った。


「お手並み拝見といこうか」

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