一途な彼にとろとろに愛育されてます



「いただきます」

「……いただきます」


その言葉を合図に、ふたりグラスを持ちビールを注ぐ。

それを乾杯のひとつもせずに飲むと、炭酸の刺激とほのかな苦味を感じて「ぷはぁ」と息を吐いた。



「はぁ、おいしい!今日もこの一杯のために頑張ったー!」

「オヤジみたいなこと言ってんなよ」



そんな私を見て檜山も、自分のグラスにビールを注いで口をつける。



「つーかミネコ、また焼きそば?お前これ以外作れないの?」

「作れるよ?パスタとかラーメンとかそうめんとか」

「麺類ばっかじゃん」



自信満々に言う私に、檜山は呆れたように笑った。



職場では私と檜山はただの同期。

それ以外はなにもない。あくまで職場でのみの関係だ。


というのが表向きの関係で。

けど実際は、私たちはもうかれこれ3年ほど一緒に住んでいる仲。



毎日交代でごはんを作り、それを一緒に食べて大好きなビールを飲む。

テレビの話をしたり、時々仕事の話をしたり、そんなふうに過ごしている。



こんな私たちの関係は、恋人同士

……ではなく。ただの同居人でしかないけれど。


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