一途な彼にとろとろに愛育されてます
2.変われなくても



彼を初めて見かけたのは、もう何年も前の春。この会社の入社式の日だった。



遠目から彼を見て、背が高いなぁとか綺麗な顔してるなぁ、でも冷たそうとか。そんなことを考えていた。

けれどその時はそれだけで、初めて会話をしたのはそれから一ヶ月以上あとのことだった。



同期数名で飲みに行くこともあったけど、基本的に檜山は無口だからあまり会話もなかったし。

私も、無口で無愛想な彼はなにを考えているのかがよく分からなくて、少し苦手だった。



だけど、そんな檜山と距離が少しだけ近づいたのは、入社一年後のことだった。



その日私は仕事中、お客様の予約を取り忘れるという大きなミスをしてしまいお客様はもちろん、上司にも強く叱られた。

叱られたこと以上に自分自身のミスにがっかりして、休憩時間ひとり裏口で泣いているとたまたまそこに現れたのが檜山だった。


< 25 / 154 >

この作品をシェア

pagetop