【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―

闘い方




「……さてと」


自分用に用意されていた食事を四人に食べさせ、食器を片付けるために部屋の外に出る。


翠蓮の部屋の中で、四人は眠りについていて。


「どうするかなー」


彼女たちを匿うことにしたものの、どうすれば、栄貴妃から隠し通せるだろうか。


「……翠玉」


「うわっ!?」


角を曲がった時、急に現れた人影。


仰け反ると、そこに居たのは明景さん。


「え、栄貴妃様の、灯籠見物の供をしていたんじゃ……」


もう、帰ってくる時間帯なのだろうか。


「…………」


明景さんは何も答えず、ニコッと笑って。


「翠玉、何か隠しているでしょう?」


その笑顔は、何故か背筋を粟立たせた。


「何か、とは?」


「子供、四人とか?」


「っ」


明景さんは、知っていた。


彼女たちの、存在に―……気づいていて、翠玉が招き入れたのも気づいていて、鎌を掛けてきている。


「正直に答えて、翠玉」


「そんな……何のことか……」


ここは、誤魔化すべきなのか。


バレてしまえば、彼女達の未来は危うい。


守ると約束した。


(だから、私は彼女たちを守ることに、命をかける)


「……例え、何かを守るためだとしても」


強い口調が、降る。


顔を上げると、明景さんはどこか泣きそうな顔で。


「全てを、失うことになるわよ」


その一言は、深く翠蓮の胸に突き刺さって。


「……四人のことは見ないふりをしていてあげるわ。だから、何かあったら、私の元に来てね」


いつも通りの笑顔。


いつも通りの言葉。


それなのに、どうしてこんなに怖いのだろう。


いつも笑っている、明るい彼女。


どうして、あんなに泣きそうな顔をしていたのだろう。


謎は残り、夜は明け行く。


ゆっくり、ゆっくりと、始まりと終わりと時間が近づいてきていた。


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