【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「俺の国は兄弟を地獄へ送り、くそ官吏共を地獄へ送り、歳食ったくそ婆共を地獄へ送ったら、平和になったからな」
肘掛に肘ついて……地獄にしか送ってないじゃないか。
「僕の息子は苦労しないよう、僕はちゃんと安定した国を繋がなくては」
「息子って……十二になるか」
「ええ。次期国王です。今は皇太子として、修行させていますよ」
「名前は……」
「双悠遠(ソウ ユウエン)です。そろそろ、皇太子妃が必要なのではないか……という声が上がっていますが、自分の妃は自分で選ぶべきだと思っていますので。悠遠の意志に任せます」
「秀敬殿も、妻を大事にしているからな」
「ええ。でも、蒼月殿も、でしょう?」
「俺は、妻はまだいい。大切にできる気もしないし……何より、自分に合う女に会えないんだよ」
蒼波国と神陽国には、後宮は存在しない。
自分の妃は、自分で選ぶのが当たり前の国。
「黎祥は会えそうか?自分に合う女」
「……会えても、結ばれるとは限らないだろう」
そう言ったとき、頭に浮かんだのは翠蓮だ。
「…………まだまだ、増えそうだもんな。お前の後宮」
「勘弁してくれ。どれだけ人がいようが、私が一人に執着することはないよ」
「そういうってことは、会えたんだな。愛してやまない女というのに」
揚げ足を取られるように言われ、黎祥は微笑する。