その悪魔、制御不能につき



そうこうしているうちに時間は流れてやや半年。



「結婚を前提に付き合ってほしい」



あいも変わらず表情の薄い社長にプロポーズまがいの交際を申し込まれた。


驚きは少なかった。あれだけデートみたいなこと続けてればそう言われることは予想できたし、それだけ時間を重ねれば社長の無表情の中の些細な感情を読み取るのもできるようになった。その中にある私への熱情も。


ならば硬直してしまったのはなぜかと問われればここが2人きりのプライベートではなく思いっきり仕事中の社長室の出来事で、しかもなんの予兆もなく唐突に言われたからだ。


一瞬自分の耳が幻聴を捉えたのかと思ったがどうやら現実らしい。明日の天気はなんだぐらいの口調で言われたから冗談かとも思えたが社長の真面目な顔にそれは却下された。


さて、ここで返事をするのかと躊躇うけどここで濁して期待させるのも残酷よね、と私は潔く腹をくくった。



「申し訳ありませんが、お断りさせてください」



ずっと前から決めていたからかその断りは自分でも思っていたより滑らかに返せた。罪悪感がないかと問われれば多少はある。断ってたとは言え外から見たら貢がせてたようなものだものね…


しかし考えてみれば私に使っていたお金も社長からみたらそんなに大きな額ではないだろうし、私が断っても社長なら引く手数多だし今は私に構っていてもすぐに他の女性ができるだろう。ちょっと申し訳ないけど断っても社長にそんな大きなダメージはないと思う。




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