その悪魔、制御不能につき



もう一度申し訳ありません、と頭を下げてから元どおりにすれば社長は怒るでも悲しむでもなく普通の顔をしていた。というかキョトンとしていたと言った方が正しいかしら?


私としてもそんな反応されるとは思わなくて困惑する。もしかして社長、今まで告白断られたことないのかしら…あり得るわね。社長の美貌って魔性めいてて老若男女惑わすし。


このまま出て行ってもいいものか…仕事内容的にはもう終わってあとは帰宅するだけなのだがこの雰囲気の中何事もなかったように出て行くのは気がひける。


不意に社長の視線が私から外れてその後ろを見る。



「湊、」


「おやおや、これは予想外でしたねぇ」



聞こえた声にドキッとしながら振り返ればそこには都築さんがいて。そういえば私がこの部屋に入る前も書類整理してたわね、と思い出す。あまりにも普段の光景すぎて忘れてたわ。


そしてそんな中告白する社長も社長だけど、そのまま居座る都築さんも都築さんだ。精神が図太い。知ってたけど。



「お前の言う通りにしたからもういいな?」


「出来るだけ平和的に行きたかったのですが、仕方ありませんねぇ」



え、都築さんが平和的とか言うとなんか違和感、という言葉はあまりにも場違いだろうとそっと心の中に隠す。というか話の流れが見えないんだけど。見えないはずなのにひしひしと感じる危機感……控えめに言って恐怖だわ。


表情を硬くする私の顔を見て都築さんがにっこりと笑う。なぜかしら、今まで見た中で一番怖い。頭の中の注意喚起に体が反応して無意識のうちに都築さんから距離を取ろうとする。悪寒と鳥肌がやばい。



「話が、見えないのだけど…」


「あぁ、申し訳ありません、斉木さん。しかし、まぁこれも運命として受け入れた方がいいですよ」



いや、だから話が見えない…




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