その悪魔、制御不能につき



内心では結構言っていたんだけど言葉にしたのは初めてらしい。言わなきゃよかったかしら。お世辞にも良いイメージの言葉ではないし。


悪魔、悪魔…と小さく何度も呟く社長が怖い。何の琴線に触れたのか。



「鷹、んっ…、」



振り向きざまに唇を塞がれて反射的に目を閉じる。しばらく堪能しただろう後にそっと目を開ければなぜか物凄く艶めいた笑顔の社長がいた。



「俺が悪魔だと言うのなら、輝夜はその悪魔と契約した人間だな」



知ってるか?悪魔との契約は魂を対価としているらしい。そしてその魂は悪魔の糧となる。…つまり、輝夜は死んでも俺のものだということだ。


うっそりと笑みを浮かべた社長はまさに悪魔と呼ぶに相応しいほどの色気をその身に纏う。落ちてしまえば這い上がることのできない底なし沼のような深い感情は多くの人にとっては破滅をもたらすものだろう。


そして数少ない人達には溺れて死んでしまいそうな重く激しい感情を。逃げることも受け入れないことも許されない、絶対的なそれは常人なら恐ろしさのあまりにどこかおかしくなるのではないだろうか。


それを普通に受け入れている時点で私も少し変わっているのかもしれないわね。あぁ、でも社長や都築さんほどではない。それは絶対に。



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