のばら
「そっか。ね、千代子のあのピンクのシャーペン買ったのって、ここ?」
のばらは特に樹里の反応を気にする様子もなく、あたしに身体をぶつけるようにして寄ってきた。まるで小犬だ。
「うん、たしかこの辺に売ってた…あ、あった」
「あったー! ね、ね、おそろい買っていい?」
この状況で断れるひとがいるだろうか。

雑貨屋のレジは混んでいて、のばらはシャーペン1本を大切そうに握りしめて列の末尾に並んだ。会計まで、5分以上はかかりそうだ。
あたしはこの機を逃さなかった。
まだバーバパパのグッズを見ている樹里の横に、すいっと寄った。
「なんかお疲れ、樹里」
「ああ、うん」
樹里は虚ろな顔を上げた。
「なんかさ」
顔を寄せ、昨日の倉科さんのように声をひそめて話しかける。
「のばらってなんかさ、独特だよね」
いつも温和な亜由美より、自己主張の強い樹里から攻めようと決めていた。
はたして、樹里の目に光が宿った。
「千代子もそう思うの?」
「あたりまえじゃない」
小声ながら、力強く肯定した。
鼓動が速まるのを感じた。
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