あの時からずっと、君は俺の好きな人。
「いくら?」

「あ、390円だけど……。300円でいいよ」

「えっ!? なんで?」

「いいからいいから」


私は冗談めいて言った。今日の昼休みに水野くんがカレーパンを奢ってくれた時の口調を真似て。

すると水野くんも昼休みの件を思い出したのか、くすりと笑った。


「じゃあお言葉に甘えて。ありがと、吉崎さん」

「うん」


そしてお金のやり取りをし、カレーパンを袋に入れて水野くんに差し出す。


「取り置き、ありがとう。じゃあ俺もう行くね」

「ーーうん」


もう行っちゃうのか、この前みたいにお茶でも飲んでゆっくりしていけばいいのに……と思ったけど、そんな誘い文句私に言えるはずもなく。

それにこの後はお店が忙しくなる時間帯。

手伝いもせずに水野くんとのんびりしてしまったら、なっちゃんに悪い気がした。なっちゃんは別にいいと言うだろうけど。
< 169 / 229 >

この作品をシェア

pagetop