あの時からずっと、君は俺の好きな人。
お店の手伝いをしていた時に、そういえばお客さんの大学生に電話番号とアドレスが書いた紙を渡されたという話を、以前美結にした気がする。

今美結に言われるまで、そんな出来事忘れていた。


「ーーああ。確かに興味が無い人にアプローチされても意味無いね。美結の言うことわかったわ」

「でしょー! 藍も理想高いじゃーん」

「はは……」


美結の言葉に私は曖昧に笑う。

理想が高いというか……。私は恋愛には不向きな体質なのだ。

ーーきっと、私が恋愛に全身全霊をかけることなんて、この先無いだろう。

いや、恋愛だけじゃなくて、きっと全てのことに。


「あ、そういえば藍」

「ん?」

「修学旅行……どうすんの?」


美結が少し心配そうな顔で尋ねてきた。

7月にある修学旅行の行先はーー大阪だった。そして往路も復路も新幹線だ。
< 8 / 229 >

この作品をシェア

pagetop