セカンド・プライオリティ

「あ、おはようりょーちゃん」

いつもの曲がり角を曲がって店の外装を視界に捉えたのと同時に、裏口の前に見覚えのある姿が見えて。ほぼ同時に気が付いたらしい相手の方がひらひらと手を振った。

「颯、帰らなかったのか?」
「なんかりょーちゃんの可愛いパンケーキが食べたくなって、待ってた」
「なんだそれ。てか可愛いってなに」
「可愛いじゃんか。ほらインスタ映えみたいな、さ」

そんなことを言いながらヘラっと笑うこいつが、共同経営者の向井颯。
颯は主にバーの方を担当している。バーは夜中の3時まで営業しているため、彼は基本的に始発で家に帰っているのだけれど、今日はそうではなかったらしい。

「なんか顔合わせるの久々じゃない?」
「そうかー?先週も会っただろ」

俺たちは基本的にそれぞれが昼と夜の責任者で。ありがたいことにスタッフの数にも困っていない為、出勤がかぶることはほぼないに等しい。

少しだけ手繰り寄せた記憶の後にそう口にすると、抗議するかのように颯がぐっと眉間に皺を寄せた。
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