セカンド・プライオリティ
さて、早く店に行かないとな…

颯がいない状態で夜の営業をしている太一のヘルプに向かうため、タクシーに乗り込み店の住所を伝える。

タクシーが走り出したところでポケットに入れたスマホを取り出し、メッセージアプリを開く。

「…」
数回指を動かしてから、途中まで打った文章を消した。

「大切なことは、直接、だよな」

そう自分に言い聞かせるみたいに呟いて。
辛いときに一緒にいられない謝罪と、颯のいない1週間は忙しくなりそうなことだけを打ち込み、送信ボタンを押した。

結局森さんからの頼まれごとも叶えてあげられなかったし…颯が退院するきっちり1週間後、絶対に休みをもぎ取ってやる。

そう心に誓い、スマホをポケットの中にしまい込んだ。

たくさん美己の話を聞こう。
そして俺が言葉にしてこなかった気持ちも、全部言葉にして伝えよう。


…その決断が間違っていたことに俺が気付くことが出来たのは、それから数日後のことだった。

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