あなたの味は。
「君は付き合ってた時、よく僕に甘えてくれたよね」

彼の言葉に手足を縄で棒に縛られ動けなくなった女性は声を上げた。

調理1 『 泉田 遊の肉炒め 』

「なんで、こんなことっ!!」

彼女の声は震えていた、当たり前だ。
さっきまで愛し合っていたはずの人がまるで別人のように見える。恋人からもらった紅茶を口にした彼女は目が覚めた時、すでにこの状態だったのだ。
身動きもとれず、抵抗する術は恋人であるはずの彼に語りかけることだけだった。

「ねえ、答えてよ...」

彼女の恋人は鼻歌をうたいながらキッチンで何かしているようだった。彼女はこれからされることを想像することもできない、ただ異常な状況であることだけは理解することができた。
彼女の恋人は「ああ、決めた!」とやっと声を上げた。それは遊が彼に語りかけ始めてから数十分後のことであった、遊はもう疲れ果てたのか、ぐったりとしていた。しかし、恋人の声に反応しもう一度声を上げる。「なんで!」「何をしようとしてるの!」ただその言葉を繰り返し、繰り返し、だが返事は返ってこない。キッチンから出てきた彼女の恋人はエプロンをつけて、いつも彼女に見せていた笑顔で笑っていた。だが、それは今の状況では不気味なだけだ。

「遊、僕は君を愛してる」

突然の愛の告白に遊は戸惑う。
それはいつも彼が自分に囁いていてくれていた言葉。遊は自然と顔がひきつり恋人に茶化すように聞いた。「アンタ、こういうプレイが好きなの?」って。
そうすると彼は「まさか!」と笑った、随分おかしく思えたのか、声を出して笑っている。

「じゃあ、この紐をといてほしいんだけど」
「それは出来ないよ」

即答だった。彼は考える様子もなく、すぐにそう答えたのだ。それが更に彼女を絶望させた。

「じゃあ縛り付ける理由は何?」

これは純粋な疑問だった。彼女が考えても考えてもわからないものだった。恋人は答える。
というより、話を始めた。

「牛はハンマーで頭を1度殴られて殺されるらしい、昔見た映画だから今はもっと違うかもしれないけどね。でも、外せば1発じゃないんだよ、何発もする時もあるって、逃げようとするけど逃げられないんだ。縛られてるから、動けない」

「何の話よ、それと今の状況。関係あるの?」

「僕は1発でいかせてあげるよ」

背筋がゾッとした気がした、牛の話。恋人の発言、彼女は頭の中で葛藤する。
そんなはずない、そんなことするはずない、彼はそんな人じゃない。
だが、現実はそうではないのだ。

「僕は愛した人の肉が大好きなんだ、君はどんな味がするのかな。ああ、考えただけでドキドキする!」

遊は、もう、やめた。
目の前の恋人は。化け物だった。
それに彼女は気づかなかった。皮の下に隠れた本性を、笑顔の裏に隠された考えを。全てを。

「君はどんな味がするのかな」

遊は最後に叫んだ、無意味だとしても。
抑えることができなかった、最後の抵抗だった。

「この、異常者が!地獄に堕ちろ!!」

「君は付き合ってた時、よく僕に甘えてくれたよね」

彼の言葉に手足を縄で棒に縛られ動けなくなった女性は声を上げた。

調理1 『 泉田 遊の肉炒め 』

「なんで、こんなことっ!!」

彼女の声は震えていた、当たり前だ。
さっきまで愛し合っていたはずの人がまるで別人のように見える。恋人からもらった紅茶を口にした彼女は目が覚めた時、すでにこの状態だったのだ。
身動きもとれず、抵抗する術は恋人であるはずの彼に語りかけることだけだった。

「ねえ、答えてよ...」

彼女の恋人は鼻歌をうたいながらキッチンで何かしているようだった。彼女はこれからされることを想像することもできない、ただ異常な状況であることだけは理解することができた。
彼女の恋人は「ああ、決めた!」とやっと声を上げた。それは遊が彼に語りかけ始めてから数十分後のことであった、遊はもう疲れ果てたのか、ぐったりとしていた。しかし、恋人の声に反応しもう一度声を上げる。「なんで!」「何をしようとしてるの!」ただその言葉を繰り返し、繰り返し、だが返事は返ってこない。キッチンから出てきた彼女の恋人はエプロンをつけて、いつも彼女に見せていた笑顔で笑っていた。だが、それは今の状況では不気味なだけだ。

「遊、僕は君を愛してる」

突然の愛の告白に遊は戸惑う。
それはいつも彼が自分に囁いていてくれていた言葉。遊は自然と顔がひきつり恋人に茶化すように聞いた。「アンタ、こういうプレイが好きなの?」って。
そうすると彼は「まさか!」と笑った、随分おかしく思えたのか、声を出して笑っている。

「じゃあ、この紐をといてほしいんだけど」
「それは出来ないよ」

即答だった。彼は考える様子もなく、すぐにそう答えたのだ。それが更に彼女を絶望させた。

「じゃあ縛り付ける理由は何?」

これは純粋な疑問だった。彼女が考えても考えてもわからないものだった。恋人は答える。
というより、話を始めた。

「牛はハンマーで頭を1度殴られて殺されるらしい、昔見た映画だから今はもっと違うかもしれないけどね。でも、外せば1発じゃないんだよ、何発もする時もあるって、逃げようとするけど逃げられないんだ。縛られてるから、動けない」

「何の話よ、それと今の状況。関係あるの?」

「僕は1発でいかせてあげるよ」

背筋がゾッとした気がした、牛の話。恋人の発言、彼女は頭の中で葛藤する。
そんなはずない、そんなことするはずない、彼はそんな人じゃない。
だが、現実はそうではないのだ。

「僕は愛した人の肉が大好きなんだ、君はどんな味がするのかな。ああ、考えただけでドキドキする!」

遊は、もう、やめた。
目の前の恋人は。化け物だった。
それに彼女は気づかなかった。皮の下に隠れた本性を、笑顔の裏に隠された考えを。全てを。

「君はどんな味がするのかな」

遊は最後に叫んだ、無意味だとしても。
抑えることができなかった、最後の抵抗だった。

「この、異常者が!地獄に堕ちろ!!」

その言葉に対して彼女の恋人は残念そうにため息をついて、「ああ、ちょっと不味くなったかな」


今日の料理は肉炒め、僕の恋人はヘルシーな料理を好んで食べていたからアッサリとした味がするのかな。口に入れてみる。塩との相性がよく口の中に広がる何とも言えない恋人の味。
最後の最後、変な事言うから不味くなったかと思ったけど、やっぱり僕が愛した分、いいものが詰まってるみたい。やはり、愛した人の味はとても美味しい、これだからやめられない。星をつけるなら4.2ってところかな。微妙かな?最後の言葉がなければ4.5だったかも。残念だね、遊。
でも、キチンと最後まで君を食べ切るから安心してね。まだまだ材料は残っているし、でも腐るのも時間の問題だろうから早く食べきらないと。
食べ物を粗末にするのはよくないことだ、両親からそう教わった。両親の味に比べたら遊はとても美味しいね。

「ふふ、ご飯に合うよ。さすが君だ!僕の恋人として誇ってくれよ」

今日はお箸がすすむなあ、明日は何を食べようかな。もっと美味しく彼女を味わいたいな。
ワインのつまみには、彼女のどこが合うだろう、考えるだけで楽しみだ。さてと、今日はここらへんで「ごちそうさまでした」彼はそう呟いた。
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