君と見つける、恋の思い出
「見惚れてんの?」
物音立てずに俺の横に来て、耳元でそんなことを囁いたのは須藤さん。
俺は驚き、勢いよく横を見た。
須藤さんの顔は真横にあり、余計に驚いた。
「クール男子を動揺させるのって楽しいねえ」
須藤さんは声を殺して笑った。
……馬鹿にされた。
「わざわざ、からかいに来たんですか」
「まさか。仕事しに来たらぼーっと突っ立ってる蓮を見かけたから」
だからって、からかうことはないだろ。
すると、須藤さんは俺の背中を遠慮のない力で叩いた。
「シャキッとしなよ? 叶花が目を覚ましたとき、そんな不安な顔を見せないで済むようにさ」
そして、二度軽くおまけで叩き、須藤さんは仕事に戻った。
須藤さんの言葉は、いやに頭に残った。
俺はベッドの横に置いてあった椅子に座る。
いつもならここで本を取り出すが、今日は持ってきていない。
だから、大人しく叶花が目を覚ますのを待った。