君と見つける、恋の思い出


それと同時に、涙が溢れた。


止めようと思っても無理で、俺はただただ一人で声を殺して泣いた。



落ち着いてきたころには、日が傾き始めていた。



泣いてたこと、バレるだろうなと思いながら、叶花のところに行った。



叶花は昨日と同じようにして、眠っていた。



俺は丸椅子に座り、そっと叶花の右手を握った。



すると、叶花がゆっくりと目を開けた。


目線が動き、俺に留まる。


そして表情を緩めた。



「蓮くんだあ」



ゆったりとした、小さな声にまた涙腺が弱まる。


視界がボヤけていって、俺は空いていた右手で目元を擦った。



「泣き虫蓮くん。お母さんに聞いたの?」



叶花の声には元気はなく、優しさの塊だった。



それが余計に涙腺を壊すわけだが。



俺は叶花の質問に、黙って頷いた。



「そっかあ……ごめんね、秘密にしてて」



気付けば、握っていたはずの手は握り返されていた。


弱々しい力だったけど、温もりを感じた。



「……別に」
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