君と見つける、恋の思い出


それを、叶花が俺に言わなかった。



これを俺自身がちゃんと納得出来なきゃ、いつまでも叶花のところには行かれない。



……だが、自信ない。



どうして叶花が結斗さんと喧嘩したのかを読み取れなかった俺が、そんなことをわかるのか。



あれだけ叶花といたのに、叶花のことがわからなくなってきた。



……もし、俺が叶花の立場だったらどうする。



俺はあの病室での空間が好きだった。


誰にも邪魔されない、俺と叶花にしかわからない空気感。



あれは大切で、失いたくなかった。



叶花に寿命だと話せば、叶花は気を使うだろう。


俺の好きな空間を、壊してしまうようなことをしそうだ。



……そうか、そういうことか。



叶花も俺と同じように、あの時間を大切にしていたとしたら。


だとしたら、寿命のことは言えない。



なんだ、簡単なことじゃないか。


それもわからなかったのか、俺は。



呆れて笑ってしまう。
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