君と見つける、恋の思い出


実際言われた言葉じゃないが、写真に興味がない俺にカメラを与える理由は、これしかない。


俺はカメラなんかに興味はないから。



理由はどうであれ、結局ここにしか使い道はないわけで、俺は仕方なくこれを使っている。



そして十年前、叶花たちと出会った場所に立った。



「もう散り始めてるな」



川沿いの道はもちろん、川面にも桜の花びらが落ちている。



結構幻想的で、俺は木よりも川の写真を撮った。



一応木の写真も撮りはしたが、叶花が気に入るかは知らない。



数十枚撮って、どんな写真が撮れたかを確認する。



……全部同じ、橋の上からの写真になってしまった。



下に降りたら、桜の木を見上げた感じの写真が撮れるか。



タイミングよく風が吹けば、舞う桜もカメラに収められる。



……これはいいかもしれない。



俺は土手から川沿いの道を繋ぐ、階段を降りた。


そして割と桜が残っている木の下に行き、カメラを構える。



ここだと思うタイミングでシャッターを切っていく。
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