君と見つける、恋の思い出
数枚撮って、俺はカメラを下ろした。
「なんでいい写真撮ろうとしてんだ、俺……」
興味ないはずなのに。
写真なんて、花なんて、景色なんて。
全部どうでもいいはずなのに。
叶花のためとはいえ、ここまでする必要はないだろう。
叶花は普通に、桜が見たいだけ。
綺麗な写真が見たいわけじゃない。
そんなこと、わかってるのに……
あのコスモスの写真を褒められたからか?
また、褒めてもらおうとしてるのか、俺は?
いや、まさか。
褒められたって、なんにもならない。
……じゃあどうして。
俺が、いい写真を撮る理由……
叶花を笑顔にしたいから。
……なんてな。
なに言ってんだか。
自問自答の結論に呆れ、俺は笑みを零した。
そして、またカメラを桜に向ける。
「おーい、れーん!」
すると、橋の上から誰かに呼ばれた。