君と見つける、恋の思い出


それで、母さんもいたわけか。



二人は今後のことを話し始めた。



「叶花?」



いつもならウザイくらいのテンションで喜ぶのに、そんな様子がない。



「蓮くん……私、お母さんがいるところで、嬉しい!なんて言えない」



……なるほどな。


叶花なりの気遣いだったわけだ。



「瞳ちゃんが来てくれるのは嬉しいよ。でもね、同じくらい、お母さんが来てくれても嬉しいの」



その思いが理香子さんにそのまま伝わる保証はないもんな。


むしろ、マイナスに取られる可能性のほうが高い。



「素直に喜べないって苦しいね」



あいにく、そういう状態になったことがないから、肯定も否定もできない。



だが、正直者の叶花からしてみれば、たしかに苦しいかもしれない。



そんなことを思いながら、俺は立ち上がった。



「蓮くん、帰るの?」


「ああ、またな」


「うん! 学校でね!」



心から言ってみたかったんだろう。


いつもより弾んだ声だった。
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