冷たい幼なじみが好きなんです


保健室に着くと、三台並んだベッドのなかの一番奥のカーテンがしまっていた。


あそこに遥斗くんがいる。

彼女であるわたしは遠慮なくそのカーテンの中へと入った。


顔色のよくなった遥斗くんがそこには眠っていた。


綺麗な寝顔。

この人がわたしの彼氏だなんて、今でも信じられない。

今も夢を見ているみたい。


わたしのことを優しく「百合」と呼んでくれる遥斗くん。


遥斗くんに名前を呼ばれるたび、綺麗な瞳に見つめられるたび、

わたしは遥斗くんのことをどんどん好きになっていく──


「…………………えみ………」


遥斗くんの薄めの唇から………わたしではない女の子の名前が紡がれたことを、わたしは聞き逃さなかった。


…………………え?


聞き、間違い…………?


エミってだれ…………?


そのとき、遥斗くんの瞳がゆっくりと開かれた。


「…あ、遥斗くんっ!目が覚めた?」


安心して、遥斗くんの右手を思わず手に取った。


「…ああ、百合」


遥斗くんはまだ頭が働いていないかのようにつぶやいた。


百合。

そう、わたしの名前は百合──。


「ずっと手握ってくれて……ありがとな」


彼は手元に目をやって………うれしそうにふわりと微笑んだ。

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