冷たい幼なじみが好きなんです
「うざいんだよお前ッ!」
「お前は二宮くんと一緒に装飾したかっただけだろ!!教室でイチャイチャしてんじゃねえよ!!」
遥斗くんと付き合いはじめてから、クラスのリーダーづらをしている女の子たちにまわりがいないところでたまにひがみを言われるようになった。
だけどわたしは気にとめなかった。
こういうのは気にするだけ無駄。
言いたい人たちには言わせておけばいい。
………こんな人たちより、わたしはよっぽど──
「遥斗くんは自分のもの、みたいな顔しないでよ…!!」
──よっぽど、あなたの存在のほうが邪魔だった。
佐倉さんがわたしの前から走り去っていってから、彼女がチャーム型の時計を落としていったことに気がついた。
………これって………。
その時計は、遥斗くんとこのあいだ街でデートしているときに寄った時計屋で………
彼が見ていたものだった。
悲しげに。切なげに。
………そして、愛しげに。
──あのときと、同じだった。
この時計はきっと、遥斗くんが佐倉さんに贈ったものなんだ。
心が握り潰されるかと、思った。
彼の心には──佐倉さんが、いるんだ。
そんなの………っ嫌だ………!!!
わたしは時計をスカートのポケットに隠し………
遥斗くんの心の中を、見て見ぬふりした。
遥斗くんと別れたくなかった。
わたしがなにも言わなければ。なにも聞かなければ。
わたしが遥斗くんの隣にいられる。
もうそれでよかった。それだけでよかった。
──彼の心の中に、わたしがいなくても。