冷たい幼なじみが好きなんです


「笑ちゃん、おはよっ」


遥斗より早く学校に到着し、教室に入るなり、天使が天使の笑顔で出迎えてくれた。


「優香(ゆうか)、おはよ!」


わたしはなんだかほっとして笑みがこぼれる。


天使の正体は、進級してはじめて同じクラスになった女の子、中野優香(なかの)のこと。


席が隣なのがきっかけで、仲良くなったんだ。4月からまだ席替えをしていないから、現在も隣どうしだ。


4月の始業式、1年のときの女の子の友達とは全員クラスが離れてしまってどうしようかと不安に思っていたけれど、始業式早々優香とすぐに打ち解けて安心したのを今でも覚えている。


優香は見るからに“いいこ~!”っていうのが全身からにじみ出ていて、すっごく可愛くて一緒にいるだけで癒される。

いつもサラサラな黒いロングヘアーをハーフアップにしていて、お嬢様ってかんじ。

見た目だけじゃなくて、中身も女子力が高い。


ようするにうるさいわたしとは正反対なんだ。


わたしはあんまり髪の毛とか化粧とかこだわるタイプじゃないし、性格はおおざっぱ。几帳面って言葉はわたしのなかから消えてるみたい。これももちろん、お母さんゆずり。似たらいけないところばかり似て、困ったもんだ。


なのに優香はこんなわたしのことを気に入ってくれたみたい。


一緒にいて楽しいって思ってくれるなら、一番うれしいよね。


わたしも優香といると、すっごく楽しい。


「笑ちゃん、わたしね、クッキー焼いてきたの!お昼に一緒に食べよっ」


そう言って優香が見せてきたのは、うすピンク色のタッパーに入ったたくさんのクッキー。


「わあ~!おいしそう!」


一瞬にして瞳を輝かせ、クッキーに釘付けになるわたし。

朝は食パン1枚しか食べなかったから、今もうすでにお腹がすいてる。

あの全力疾走のせいで、あっという間に消化してしまったにちがいない。

< 3 / 192 >

この作品をシェア

pagetop