冷たい幼なじみが好きなんです
「…お前、無防備すぎるんだよ。男がどういう生き物か、わかってんのか?」
「え…?」
冷たい目線で真上から見下ろされ、小さなわたしに大きな影ができる。
遥斗のいつものサラサラの黒い髪の毛は、水分を含んで重たくなっている。毛先で雫が揺れているのを、わたしはこの距離で確認した。
「ノコノコ家にあげて…なにされてもいいのかよ」
遥斗の言っている意味が……よくわからない。
「竜は、変なことしないよ…?」
男女で頭の作りは多少ちがうのかもしれないけど、わたしの家のものを勝手に触ったり、盗んだり…竜はそういう常識はずれの人間じゃない。
遥斗もそれはわかってほしい。
遥斗が男の人を家にあげるなって、そういう意味だよね……?
今雫がそんなにも揺れているのは、遥斗のなかのなにかと、比例しているのであろうか。
「………はあ」
希望の光なんてほんの少しも見えないようなため息をついたと同時に……
大きな雫が、わたしの鼻の頭にポタリとこぼれ落ちた──
「……お前のそういう鈍いところ、すっげー腹立つ」