イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

安藤と私の身長差は三十センチ。当然、歩幅も安藤の方が広い。それなのに歩く速度が同じなのは、安藤が私の歩調に合わせてくれているからだ。

少し酔っているとはいえ、安藤の気遣いを冷たくあしらってしまったことが後ろめたい。けれど強がった手前、今さら『ごめんね』とは言いづらい。

だから私は躊躇いつつも安藤に向かって手を伸ばして、自ら彼の大きな手を握った。

「……っ!?」

安藤が大きく息を飲む。

「転びそうになったら、きちんと支えてよね」

「お、おう」

つい高圧的な口調になってしまったのは、自分から安藤の手を握ったことが恥ずかしかったから。そして安藤の返事がぎこちなかったのは、不意に手を繋がれて驚いたからだろう。

安藤の温もりを心地よく感じながら手を引かれる。すると指と指の間に彼の長い指がすべり込んできた。

隣にいる安藤の顔を見上げてみても、彼の視線は真っ直ぐ前を向いたまま。涼しい表情を崩さずに、指を絡ませ続ける安藤の横顔は妖艶だ。

頬が火照るのはビールを飲みすぎたせいなのか、それとも安藤に翻弄されているからなのか、わからない。

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