イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

居酒屋を後にすると、安藤のマンションに置いたままのキャリーケースを取りに戻る。

「あんど~。今度蓮くんに会うときは、私にも絶対声をかけてねぇ」

なんとなく呂律が回らないような気がするのは、ビールを飲みすぎたから。蓮くんと別れた寂しさと、明日から仕事だという現実を忘れたくて、ついビールを飲むペースが早くなってしまったのだ。

「わかったから。ほら。真っ直ぐ歩けよ」

「歩いてるもん!」

ほろ酔いの私の耳に聞こえてきたのは、安藤の指図。

体がフワフワとする中、聞こえてきた偉そうな安藤の言葉が気に入らなくて、マンションに向かっていた足を止めるとすぐさま反論した。そんな私の目の前に安藤が手を差し出す。

「まったく、しょうがねえな。ほら」

「なに?」

「危なっかしいから手を繋いでやる」

たしかに今日は普段より酔っている気がする。でもひとりで歩けないほど、悪酔いはしていない。

「手を繋いでもらわなくても、ひとりで歩けます!」

同じ歳なのに子供扱いしないでほしい。

再び安藤に反論すると止めていた足を一歩踏み出した。

「素直じゃないな」

「悪かったですね」

あきれ顔を見せる安藤にかわいげのない言葉を浴びせつつ足を進めていたら、彼が隣にスッと並んだ。

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