イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

『突然連絡して悪かったね』

「いいえ」

『久しぶりに穂香の声が聞けてうれしかったよ』

「……はい」

根本さんとつき合った期間は、たったの二カ月。その年の秋、彼は大阪支店に営業課長として異動した。

『それじゃあ、元気で』

「はい。根本さんも」

約三年半振りの会話が終わる。

別れてから同じ支店で顔を合わせることが気まずくて、意識的に彼を避けていた。けれど今日は普通に話すことができた。

少しは私も成長したのかな……。

月日の流れを実感していると、手にしたままのスマホが震えた。

もしかして、根本さんがまた?

彼との恋愛は、もう過去のこと。でも彼のことが嫌いになって別れたわけじゃないし、日にちを変えて会おうと言われたら今度は断りきれないかもしれない。

動揺しながらスマホ画面を見ると、そこには同期のアイツの名前が表示されていた。

「もしもし」

『俺だけど、まだ?』

お互いのナンバーが設定済みなのは、研修時に同期全員のナンバーを登録し合ったから。

「今行く」

『了解』

言葉短く通話を終わらせると、スマホをバッグにしまう。

お寿司をおごるのは気がのらないけれど、これ以上安藤を待たせるわけにはいかない。

バッグを肩にかけると更衣室のドアを開けて廊下に出る。そして安藤と待ち合わせた通用口に急いだ。

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