イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
銀行を後にすると安藤の要望に応えて、駅前の回らないお寿司屋さんに入った。テーブル席に案内され、ふたりでメニューを覗き込む。
「これでいいよな?」
安藤が指を差したのは、特上にぎり。大トロと中トロ、ウニにボタン海老など贅沢な内容だ。お値段は一人前、五千円也。
おのれ、安藤め。ここぞとばかりに、わざと高い特上にぎりを選んだな。
向かいの席に座る安藤を、恨めしく見つめる。けれど安藤は私の視線など気にもせずに、軽く手を上げると店員さんを呼んだ。
「特上にぎりをふたつと、ビールをお願いします」
「はい、かしこまりました」
私が口を挟む間もなく、安藤が素早くオーダーしてしまった。
あの、お金を払うのは私なんですけど……。
嫌味のひとつやふたつ言ってやろうかと思ったものの、ごちそうを食べる前にケンカなどしたくない。
そう思い、気持ちを落ち着かせるためにグルリと店内を見回してみた。
座敷席もある店内は、ほぼ満席。通路の脇にはいけすがあり、魚が優雅に泳いでいるのが見える。カウンターの奥でお寿司を握る板前さんも、お客さんと気さくに会話をしていて雰囲気がいい。