イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
安藤が不思議がるのは当然だ。だって『同期会のこと』というのは、真っ赤な嘘なのだから……。
同期会の幹事は持ち回りで担当している。次回の幹事は渋谷支店の中山くんだ。しかし彼から同期会開催の連絡はまだないし、私が安藤に同期会について相談することなどひとつもない。
それなのに嘘をついてまで安藤に声をかけたのは、木村さんとの仲を邪魔したかったから。私は安藤に馴れ馴れしく接する木村さんに嫉妬したのだ。
「木村さん、すみません。今日はこれで。お疲れさまでした」
「……わかったわ。お疲れさま」
同期会のことで相談があるという私の言葉を信じた安藤は、木村さんとの会話を半ば強引に終了させる。一方の木村さんは不満こそ口にはしなかったものの、鋭い視線を私に向けてきた。
「すみません」
睨むような木村さんの目線が怖くて咄嗟に頭を下げる。しかし彼女は私を無視したまま、二階の更衣室に続く階段を駆け上がって行ってしまった。
今まで安藤が誰とどんな話をしているのかなんて、気になったことは一度もない。それなのに今日は木村さんに嫉妬して、ふたりの会話を阻止してしまった。
私、安藤のことが……。
自分の胸の奥底に芽吹いた新たな感情に戸惑い、その場に立ち尽くす。すると横から安藤に声をかけられた。