イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

勾配がきつく、急カーブが続く道をひた走る。多少の渋滞はあったものの、最初の目的地である元箱根に無事に到着した。

駐車場に停めた車から降りた私たちの目の前に広がるのは、箱根随一の景勝地でもある芦ノ湖。青々とした湖の先には富士山が見えて、その景色は息を飲むほど美しい。

「穂香、こっち」

芦ノ湖の風景に見惚れている私に向かって、朝陽の手が伸びてくる。

「あ、うん」

その彼の大きな手を握り、箱根神社に向かって足を進めた。土曜日の元箱根周辺は、多くの人で混雑している。朝陽とはぐれないように繋いだ手をギュッと握ると、彼も私の手を力強く握り返してくれた。

たったそれだけのことがとてもうれしくて、朝陽の腕に体を寄せる。

「箱根神社の奥にある九頭龍(くずりゅう)神社にも足を伸ばそうと思っていたけど、これなら行かなくてもいいかもしれないな」

「えっ? どうして?」

予定を変える理由がわからずに首を傾げれば、朝陽がクスッと小さく笑った。

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