イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

日頃の疲れを癒すための温泉だったはずなのに、若干だるさを感じているのは長湯したせい?

それでも目の前に並んだ豪華なごちそうを前にしたら、疲れなどあっという間に吹き飛ぶ。

「朝陽、これすごくおいしいよ」

「どれどれ」

あまり食べる機会がないハモの湯引きを勧めてみれば、朝陽がそれを口に運んだ。

「ね?」

「ほんとだ。うまい」

紺色の浴衣を身にまとう朝陽の顔に、あどけない笑みが浮かぶ。

朝陽の浴衣姿を見るのは今日が初めて。襟もとから覗く骨ばった鎖骨が妙に色っぽくて、ついじっと見つめてしまった。

そんな私の視線に気づいた朝陽が、ハモを食べながら首を傾げる。

「ん? なに?」

食事中だというのに、朝陽の鎖骨に見入っていましたと言うのは恥ずかしい。

「ううん。幸せだなって思って」

なにを見ていたかは内緒にしたまま今の自分の気持ちを口にすれば、朝陽が「俺も」
と同意してくれた。

今日も明日も朝陽を独占できる喜びに浸りつつ、おいしい食事に舌鼓を打った。

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