イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
予想外の出来事に戸惑い、この先どうしたらいいのかわからずにいると、朝陽に手首を掴まれた。
「穂香。ちょっと来て」
「あ、うん」
同期たちの騒がしい声を背後に聞きながら、朝陽に手を引かれて座敷部屋から出た。
朝陽の広い背中を見つめるだけで、やはり離れ離れになるのは嫌だと思ってしまう。
このまま送別会を抜け出して、朝陽とふたりきりになれたらいいのに……。
朝陽を独占したい欲求に駆られたとき、通路を曲がった先で彼の足が止まった。
「穂香? どうしたんだよ」
「心配かけてごめんね」
朝陽が主役の送別会を混乱させてしまったことを心苦しく思いつつ謝れば、彼の手が私に向かって伸びてくるのが見えた。
「俺、穂香に起きたことや考えていること、すべて知りたい。だから泣いた理由教えて」
腰を屈めた朝陽が、私の頬に伝う涙を指先で拭ってくれる。
私が泣いた理由を告げたら、きっと朝陽を困らせる。それでも朝陽に心配をかけた以上、泣いたことをうやむやにするわけにはいかない。
「ずっと……我慢してたの」
「なにを?」
「……寂しいって言うのを」
泣いた理由を打ち明ければ、涙で揺らめく先に見える朝陽の口からフッと小さな笑い声が漏れた。
「バカだな。我慢することなかったのに」
そう言った朝陽の腕が私の背中に回る。