イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

元カレと再会


タクシーを降りると、新大阪駅の構内をフラフラと進む。

多くの人が行き交う新大阪駅で、肩を寄せ合って構内を進む恋人たちについ目が向いてしまう。

本当だったら私も、朝陽と一緒にクリスマスイルミネーションを見て微笑み合っていたはずなのに……。

幸せそうな恋人たちとすれ違うたび、今、私はどうしてひとりなのだろうという思いが涙とともに込み上げてきた。そのとき……。

「穂香?」

不意に聞こえてきた声に反応した私の足がピタリと止まる。

「えっ? 根本さん?」

涙で視界が揺らめく中でも、自分を呼び止めた人物が根本さんだとわかったことに驚きながら元カレを見つめた。

「どうして大阪に?って、あれ? どうしたの?」

目を丸くした根本さんに顔を覗き込まれ、自分が半泣きしていたことを思い出した。

目尻に滲んだ涙を指先で慌てて拭う。けれど朝陽しか頼る人のいない大阪でまさかの再会を果たした根本さんを前に、緊張の糸がプツリと切れて大粒の涙が瞳からポロポロとこぼれ落ちてしまった。

新大阪駅の構内で泣いたら目立ってしまう。

「……ご、ごめんなさい」

これ以上、根本さんに迷惑かけるわけにはいかない。

震えた声で謝ると、根本さんの前から立ち去るために足を一歩踏み出した。その矢先、不意に手首を掴まれる。

「穂香。俺でよかったら話を聞くよ」

元カレの優しくて温かい言葉を聞き、私の涙腺が再び崩壊した。

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