イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

今日はずいぶんと多いなと思いながら、鈴木さんから書類の束を受け取った。

「ごめんね。私、明日から旅行だから、早く帰って準備したいんだ」

「そうですか。楽しんできてくださいね」

「ありがとう。お土産買ってくるから。じゃあ、お先に」

「お疲れさまでした」

デスクの片づけを手早く終わらせた鈴木さんが営業室から出て行った。

明日の五月三日からゴールデンウイーク後半に突入する。今年は祝日と土日を合わせると、四連休。しかし学生時代の友人はすでに結婚しているため気軽に誘えないし、彼氏もいない私はどこにも行く予定がない。

ゴールデンウイークに旅行に出かける鈴木さんをうらやましく思いつつ、ションボリと肩を落として営業室の奥にある書庫に向かうと、預金課庶務係の木村さんと出くわした。

「木村さん、お疲れさまです」

「お疲れさま。あ、鈴木さんにまた押しつけられたの?」

「……はい」

私が手にしている書類の束を見た木村さんが、眉をひそめた。

木村さんが『押しつけられたの?』と言ってきたのは、鈴木さんにファイリングを頼まれるのは今日が初めてではないから。鈴木さんは初めこそ、申し訳なさそうにファイリングを頼んできたけれど、今ではあたり前のように書類を私に差し出してくる。

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