イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

身支度を整えて、安藤と待ち合わせをした横浜駅のコーヒーショップ前に向かう。今の時刻は午前九時五十分。待ち合わせ時間の午前十時まであと十分ある。

もう安藤と蓮くんは到着しているのかな?

待ち合わせ時間前とはいえ、まだ五歳の蓮くんを待たせて退屈させてしまっては申し訳ない。

キャリーケースをゴロゴロと転がして横浜駅の構内を小走りで進むこと、数分。ようやくコーヒーショップが見えてきた。すると構内を行きかう人の隙間から、安藤の姿がチラリと見えた。

もう到着しているんだ!

小走りしていた足をさらに速めて待ち合わせ場所に急いだ。

「ごめん! お待たせ」

息も切れ切れに声をかける。

「なんだよ、その荷物! 俺、二泊三日って言ったよな?」

私のキャリーケースを見た安藤が、ゲラゲラと笑い出した。

一泊二日ならボストンバッグで来た。それなのに会ってすぐさま私を笑うとは、失礼ではないか。

「二泊三日だから、キャリーケースで来たんじゃない」

日中は初夏の陽気になるけれど、朝晩は驚くほど冷え込むのが五月の気候の特徴だ。

念のために羽織る物を持っていこうとか、雨が降るかもしれないから傘を持っていこうとか、なにかと荷物が多くなってしまう女心をちっとも理解していない安藤に苛立ちつつ、反論した。
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