イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

東京にある実家から横浜支店に通うのは面倒だからと、横浜でひとり暮らしをしていると小耳に挟んだことはある。けれどそれ以外のことは、なにひとつ知らない。

「俺が住んでいるのは、ここから十五分くらい歩いたところにあるマンション。でもその前に、プラチナガーデンに寄るけどいいか?」

「うん」

プラチナガーデンとは、横浜駅から徒歩十分ほどの距離にあるショップやレストラン、映画館などが集合した商業複合施設の名前だ。

「しかし、なにが入ってんだ?」

安藤はそう言いながら、私のキャリーケースの取手を素早く掴んだ。

蓮くんと手を繋いでいる安藤にキャリーケースを運んでもらっては、負担がかかる。

「あっ、それは私が……」

「これくらい平気。それより蓮のそっちの手、繋いでやって」

ゴロゴロとキャリーケースを転がし始めた安藤が、顎で蓮くんの左手を示した。

蓮くんと手を繋いでいるにもかかわらず、片手で重いキャリーケースを軽々と運ぶ安藤は頼りがいがあって男らしい。

「う、うん。わかった」

不覚にも一瞬、安藤にときめいてしまったことを誤魔化すように急いで返事をすると、蓮くんの手を握った。するとギュッと手を握り返される。

蓮くんの手は驚くほど小さく、そして温かい。

か、かわいい……。

キュートな蓮くんに速攻ノックアウトされた私は、その小さな手をキュッと握り直した。

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