イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

少し興奮しているお姉さんとは違い、安藤はいたって冷静に私との関係を説明した。

ここまで私のことが話題になっているのに無視はできない。やや緊張しながらスマホ越しのお姉さんに挨拶することにした。

「はじめまして。柴田穂香です。安藤くんにはいつもお世話になっています」

お姉さんに頭を下げる。

「あなたが穂香さんね。はじめまして。朝陽の姉です。今回は蓮がお世話になっているようで、申し訳ありません」

安藤との会話を聞いたときは、厳しい人なのかと思った。けれど安藤のお姉さんはとても綺麗で丁寧な人だった。大きな瞳が蓮くんと安藤にとてもよく似ている。

「いいえ。蓮くん、とてもいい子にしています。さっきもカレーの人参をがんばって食べたんですよ」

「えっ! 本当に?」

「はい」

もともと大きなお姉さんの瞳が驚きでさらに大きくなった。

「蓮! がんばったわね。えらい!」

スマホを蓮くんに渡した私の耳もとで、安藤が小さな声で「サンキュ」と言う。

たしかに安藤に騙された感じで、蓮くんの面倒を見ることになった。けれど幼い蓮くんと過ごす休日は思いのほか楽しい。

「ううん」と返事をすると、安藤が白い歯を見せて笑みを浮かべた。私だけに向けられた笑顔を目にした瞬間、胸がトクンと跳ね上がる。

これって、もしかして胸キュンってやつ?

不覚にも同期の安藤にときめいてしまったことがなんだか悔しくて、慌てて視線を逸らした。

< 65 / 210 >

この作品をシェア

pagetop