イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

別に勝負なんかしていないのに、安藤に勝ったようで気分がいい。

「蓮くん、おにぎりおいしね」

「うん! おいしい!」

これみよがしに自分が握ったおにぎりを蓮くんと一緒に食べていると、安藤がから揚げを差し出してきた。

「なあ、穂香。俺が作ったから揚げも食ってくれよ」

すがるような表情を見せる安藤がおかしい。

「仕方ないなぁ」と言いつつ、安藤が作ったから揚げを口に入れた。

揚げてから時間が経っているのにもかかわらず、衣はサクッと、お肉はジューシーでとてもおいしい。

「どうだ?」

「おいしい。安藤って意外とヤルね」

普段は安藤にからかわれてばかり。だから、ここぞとばかりに安藤を攻撃してみた。けれど上から目線の私の態度に、安藤の堪忍袋の緒が切れたらしい。

「おい、おい。調子にのってんじゃねえぞ」

「んっ!」

安藤は私の頬をムニッとつまみ、その両手を左右に引っ張る。

「おー、よく伸びるな」

「ひゃめて!」

『やめて!』と言いたいのに『ひゃめて!』と口走ってしまったのは、頬が横に伸びているから。安藤の反撃が悔しくて、目の前の彼をジロリと睨んだ。すると横から蓮くんの笑い声が聞こえてくる。つられるように安藤も笑い出し、頬から手が離れた。

マヌケ顔を安藤と蓮くんに見られたことが恥ずかしい。でも蓮くんが楽しんでくれたから、まあ、いいか。と思うことにした。

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